海に揺れて

海に揺れて

フルヤアツシ

 

喧騒の中の意味を為さない会話の奔流に麻痺して

或いは白熱灯のごく穏やかに照らす内省的で会話の中に

貴方は貴方のひとりぼっちを癒やすことを求めるも

服を脱ぎ捨ててお互いの体温を平らにしながら語られる耳元のことばも

 

全てが曖昧な人形を成してあなたの眠るひとりぼっちの部屋を尋ねようとするも

その部屋の窓枠を片手で掴んだままそこで永劫に氷結して

その堆積が則ち貴方の個室に至る廻廊を成していく

 

ウルスの一族が世界版図を実現し、席捲した時の誓い

「我々はこの大地の果て終わるところまで行こう」

 

大地の尽きるところには海のある

それは恐らくこの莫大な徒労の堆積の先にあって

或いは私の自己無化を目的とした所の愛着への乾きも

或いは私の孤独と内省の中にささやかな光を求める信仰も

一切は無関心にただそれらを撹拌し、平準化し、

二律背反の葛藤の振り子に変わる包括的ゆりかごとして

私を優しく揺らすだろう

 

冬の大気を切り裂く営利な刃物のような快速電車に

夏の煩く無遠慮な大気を軽快に振り切る飛行機に

私は揺られている。常に求めて。そして

 

自分の1人ではない充足感や

或いは1人ではないが故に感じなければいけない強烈な孤独を噛み締めながら

それでもとどまることを知らず、ただ揺られ、揺られ

見えない騎馬の上に地の果てへと駆けゆく

 

私は求めるものの与えられず

やがて海に帰すことの予定調和を思いながら

ただ根源的には揺られようとしているのだと思う